ゴッホの模写
サン・レミ時代のゴッホの模写で注目すべきは、ドラクロワやレンブラントの模写が試みられていることでしょう。
もちろん、これらの画家に対する興味は、このときに始まったわけではありません。
ドラクロワは、その色彩論その他を通して、オランダ時代から強い刺激を受け続けてきた画家です。
しかし、サン・レミ時代のゴッホの手紙では、ミレーとともに語られ、両者は「何から何まで反対」でしたが「仕事の上では共通するものがある」と述べています。
このことには注意していいでしょう。
一方、レンブラントは同じオランダの画家として、ゴッホが若年期から絶対的な敬愛を捧げてきた画家です。
というわけで、ゴッホが彼らの模写を試みるのは当然といえば当然なのですが、彼が、たとえばレンブラントの『ラザロ』に試みた模写を見れば、ゴッホの「演奏」がどんなものであるかがよくわかります。
研究家が指摘しているように、ゴッホの模写には、レンブラントの作品にあるキリストの姿はありません。
「ヴァイオリンの上の弓のように往来する」彼の画筆は、キリストのかわりに黄色い巨大な太陽を描き出すのであって、当時のゴッホにとって、ラザロを復活させるのは、生命の象徴としての太陽にほかならないのです。