「オリーヴ」と「星月夜」
ゴッホは、89年の10月にベルナールにあてた手紙で、自作のある絵の構図や色彩を事こまかに模写したあとで、次にように言っています。
「きみにはわかるだろうが、この橙色と灰色によって物悲しくされた緑と、輪郭を隈どる黒い線との組み合わせ、これが、ぼくの不幸な仲間あのある人たちがしばしば悩んでいるあの『黒いような赤いような』と呼ばれる苦痛の感覚を幾分か生み出しているのだ。
それにまた、稲妻に裂かれた巨木のモチーフや秋の最後の花の緑がかったバラ色の病的な微小が加わってこの印象を強化する。」
これは、直接オリーヴの木について言われたものではありませんが、画家としてのゴッホのありようがよくわかります。
現に彼は、すぐ続けて、
「苦痛の印象を与えたければ、何も直接歴史上のゲッセマネの庭をねらわずともそれは追求できるのだ」
・・・と語るのです。
つまり、彼にとって、意味も象徴も、つねに眼前の事物の凝視を通して現れるわけですが、事物と意味とが、もっと危機的なかたちで結びつくこともあります。
この結びつきを通して、ある深淵が口を開くこともあります。